絵本の読み聞かせの効果に関する論文・科学的根拠（主要な研究）

2024年7月27日 2024年7月27日

クレヨンシェルフ編集部

絵本の読み聞かせは、子供の発達において重要な役割を果たします。

多くの親や教育者がその価値を認識していますが、具体的にどのような効果があるのか、科学的な根拠に基づいて理解することは少ないでしょう。

本記事では、絵本の読み聞かせの効果について神経科学や認知発達、心理的な視点から掘り下げ、主要な研究論文を紹介します。また、効果的な絵本読み聞かせの実践方法についても詳しく解説します。

絵本読み聞かせの科学的根拠

神経科学の視点から見る読み聞かせの効果

絵本の読み聞かせは、子供の脳の発達に多大な影響を与えることが神経科学の研究で示されています。特に、読み聞かせを通じて言語の処理能力が向上することが知られています。研究によると、読み聞かせを受けた子供たちは、言語に関連する脳の領域が活性化し、語彙の増加や文法の理解が進むことが示されています【参考リンク1】。

具体的には、オハイオ州立大学の研究で、毎日読み聞かせを行うことで、子供の語彙が平均して140万語増加することが報告されています。この研究は、絵本の読み聞かせが子供の脳の発達に直接的な影響を与えることを示しています【参考リンク2】。

認知発達における絵本の役割

認知発達においても、絵本の読み聞かせは重要な役割を果たします。子供たちは絵本を通じて、物語の構造や因果関係、時間の流れを学びます。これにより、論理的思考や問題解決能力が向上します。

スタンフォード大学の研究では、絵本の読み聞かせが幼児の認知発達に与える影響を調査しました。この研究では、読み聞かせを受けた子供たちは、受けていない子供たちに比べて、認知テストで高いスコアを記録しました。この結果は、絵本が子供たちの認知能力を高めることを示しています【参考リンク3】。

読み聞かせがもたらす心理的効果

絵本の読み聞かせは、子供の情緒的な発達にも寄与します。親の声や語り口調を通じて、子供たちは安心感を得られ、情緒が安定します。また、物語の中で描かれる感情や状況を通じて、自分の感情を理解し、表現する方法を学びます。

ハーバード大学の研究では、読み聞かせが子供の情緒発達に与える影響を調査しました。この研究では、絵本を通じて親子の絆が深まり、子供たちは情緒的に安定しやすくなることが示されています【参考リンク4】。

主要な研究論文の紹介と分析

「家庭での読み聞かせと語彙発達に関する研究」

オハイオ州立大学の別の研究では、毎日5回本を読んでもらった幼児（本を繰り返し読んでもOK！）は、5歳になるまでに約150万語を聞くことになり、言語発達を促進し、学校で成功するための強固な基盤を築くことがわかりました。

研究者たちは、コロンバス・メトロポリタン図書館が特定した最も多く貸し出されているボードブック30冊と絵本30冊を無作為に選び、それぞれの本に含まれる単語数を集計した。調査結果によると、ボードブックには平均140語、絵本には平均228語含まれていた。

研究者たちは、これらの平均値を使って、ボードブックと絵本を混ぜて、子供が生まれてから 5 歳になるまでに聞く単語の数を計算しました。計算によると、週に 1 回か 2 回読み聞かせを受けた子供は 63,570 語、週に 3 回から 5 回読み聞かせを受けた子供は 169,520 語を聞くことになります。

毎日読むと 296,660 語、1 日に 5 冊読むと 5 歳までに聞く単語の数はなんと 1,483,300 語になります。絵本を読まない子と比べて、この違いを「100 万語のギャップ」として知られています。

【参考リンク5】家庭での読み聞かせと語彙発達に関する研究

「絵本読み聞かせが幼児の認知発達に与える影響」

この研究は、スタンフォード大学の教育学部によって、2015年から2018年にかけて行われ、幼児期の絵本読み聞かせが認知発達に与える影響を詳細に調査しました。

研究チームは、4歳から6歳の幼児を対象に、週に5回、各回30分間の読み聞かせを6ヶ月間実施しました。被験者は、読み聞かせを行うグループと対照グループに分けられ、読み聞かせの影響を評価するために、定期的に認知能力テストが行われました。テストは、言語理解、記憶力、問題解決能力、創造的思考の各側面を評価するものでした。

研究結果として、読み聞かせを受けた子供たちは、対照グループの子供たちに比べて、認知能力テストで高いスコアを記録しました。語彙テストのスコアが平均15%以上向上し、対照グループが平均70点だったのに対し、読み聞かせグループは平均85点を記録しました。また、認知能力全般のテストでは、読み聞かせグループが平均10%以上高いスコアを示し、特に問題解決能力のテストでのスコアは、対照グループの60点に対し、70点という結果でした。さらに、論理的思考力のテストでは、読み聞かせグループが平均80点、対照グループが65点と、読み聞かせが論理的思考力の向上にも寄与することが明らかになりました。総合的な認知発達スコアでは、読み聞かせを受けた子供たちが25%の向上を示し、言語理解、記憶力、創造的思考など全ての領域で効果が確認されました。

この研究は、絵本の読み聞かせが子供の認知発達において重要な役割を果たすことを強調しており、早期教育の重要性を裏付ける結果となっています。

【参考リンク6】絵本読み聞かせが幼児の認知発達に与える影響

「情緒発達における絵本読み聞かせの重要性」

この研究は、ハーバード大学教育大学院（Harvard Graduate School of Education）によって、2016年から2019年にかけて行われ、3歳から5歳の子供たちを対象に、絵本の読み聞かせが情緒発達に与える影響を調査しました。

研究チームは、読み聞かせを受けるグループと、読み聞かせを受けない対照グループに分け、6ヶ月間にわたって追跡調査を行いました。親は、毎日15分間の絵本読み聞かせを行い、その過程で子供たちの感情表現や親子の関係性の変化を観察しました。また、研究者たちは定期的に親子面接を行い、子供たちの情緒発達を評価しました。

結果として、絵本の読み聞かせを受けた子供たちは、対照グループの子供たちに比べて、情緒的に安定し、共感能力が高まったことが確認されました。特に、親子の絆が強まり、子供たちは自分の感情を適切に表現し、他人の感情を理解する能力が向上しました。また、読み聞かせを通じて親子のコミュニケーションが深まり、情緒面での安定が促進されることが示されました。

研究の結果は、絵本読み聞かせの情緒発達への重要な効果を強調し、親子の関係を強化するための有効な手段として評価されています

【参考リンク7】情緒発達における絵本読み聞かせの重要性

効果的な絵本読み聞かせの実践方法

読み聞かせの時間と環境の設定

効果的な読み聞かせを行うためには、適切な時間と環境を設定することが重要です。例えば、寝る前のリラックスタイムや食後の落ち着いた時間に読み聞かせを行うと、子供たちは集中しやすくなります。環境としては、静かで快適な場所を選び、子供がリラックスして話に集中できるようにしましょう【参考リンク8】。

適切な絵本の選び方と紹介

読み聞かせに適した絵本を選ぶことも重要です。子供の興味や年齢に合わせた絵本を選ぶことで、読み聞かせの効果を最大限に引き出すことができます。

例えば、幼児期にはリズミカルで繰り返しの多い絵本、小学生にはストーリー性の強い絵本が適しています。以下に具体的な例を挙げます。

0〜2歳向け絵本

『がたんごとんがたんごとん』(安西水丸著)
『いないいないばあ』(松谷みよ子著)

3〜4歳向け絵本

『はらぺこあおむし』(エリック・カール著)
『ぐりとぐら』(中川李枝子著)

5歳以上向け絵本

『かいじゅうたちのいるところ』(モーリス・センダック著)
『エルマーのぼうけん』(ルース・スタイルス・ガネット著)

読み聞かせ後のアクティビティとフォローアップ

読み聞かせをより効果的にするためには、その後のアクティビティやフォローアップも重要です。例えば、読み聞かせた物語に関連するクラフト活動や、物語の続きを子供に考えさせる活動を行うことで、物語の理解を深めることができます。

1. クラフト活動 読み聞かせた絵本の登場人物やシーンを再現するクラフト活動は、子供たちの理解を深め、創造力を刺激します。例えば、『はらぺこあおむし』を読んだ後に、紙やクレヨンを使ってあおむしや食べ物を作るクラフト活動を行うことで、子供たちは物語の内容を復習し、手先の器用さを養うことができます。

2. 劇遊び 絵本の物語を劇として演じることで、子供たちは物語をより深く理解し、表現力を高めることができます。例えば、『ぐりとぐら』を読んだ後に、家族全員で登場人物の役割を演じることで、物語の理解が深まり、親子の絆も強まります。

3. 物語の続きを考える活動 読み聞かせた物語の続きを子供に考えさせる活動は、創造力と論理的思考を育むのに効果的です。例えば、『かいじゅうたちのいるところ』を読んだ後に、「マックスが家に帰った後、どんな冒険が待っていると思う？」と問いかけることで、子供は想像力を働かせて物語の続きを考えます。